キミとは致命的なズレがある(ガガガ文庫)

2011年06月28日 23:43

キミとは致命的なズレがある (ガガガ文庫)キミとは致命的なズレがある (ガガガ文庫)
(2011/05/18)
赤月 カケヤ

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第5回小学館ライトノベル大賞・優秀賞受賞作。
ラノベにはまだまだ珍しい、サイコスリラーです。
キミとは致命的なズレがある」(赤月カケヤ著/ガガガ文庫
作品紹介

海里克也は保健室で目を覚ました。なぜここにいるのか?保健医の鏡司によると、階段で転んで気を失っていたらしい。…覚えていない。十歳のとき、大きな事故で両親と記憶を失ってしまった克也には、ここ数年の記憶しかない。また記憶が消えてしまったのだろうか。「見えないモノが見えてないか?」そんな司の問い掛けにドキリとする。―自販機の陰から伸びる少女の姿態―突如現れ克也を責める不幸の手紙―少女の死の映像と命を狩る指の感触。これは幻覚?それとも―?第5回小学館ライトノベル大賞・優秀賞受賞作。

☆ フラッシュバックする記憶、謎の手紙。主人公に秘められた衝撃の事実とは!?
優秀賞受賞作。個人的にはこういったサイコスリラーものは好きなので、「こうして彼は屋上を~」よりは楽しめました。
こっちの方が大賞作品にいいんじゃないかとも思いましたが、こういう変化球は選考委員が評価しにくいのかな?(特にだーまえさんが)
ただ、私がこういうラストにショックがあるタイプのホラー・ミステリーを読み慣れてるせいか、わりと途中までは先が読めました。でも、後半はそうなりますか~。

「シャッター・アイランド」とかもそうですけど、嘘をつかないでミスリードするってホント難しい。
作家としての技量が試されますよね。
違うと思われていた2人の人物が同一人物だったり、いると思われた人間が存在しなかったり、というのは「叙述トリック」としてはよくあるパターンですが、作品を読んでいて「その発想はなかった」的な叙述トリックに出会うと嬉しくなりますね。
この作品はそういう意味ではまだまだ荒削りですが、ライトノベルという舞台でこのような試みをした作品に賞が与えられたというのは、結構意味があると思います。
こういうサイコスリラーものにはお決まりの「二重人格」についても言及がありますが、それを「オチ」じゃなく「ミスリード」に使ってるところがよく分かってらっしゃる。
ところで作品中、二重人格が語られる件で「イソラ」って名前の本が出てきますが、名前見た瞬間懐かしくなってしまった。
「悪の経典」「新世界より」などの作品で知られる、私が大リスペクトしているホラー・ミステリー作家・貴志祐介先生のデビュー作じゃないですか!あれも確かに13の人格を持つ女性を巡るミステリーでしたね。
作品としては佳作といった出来なんですが、貴志作品を語る上では外せない作品。ここから未来の大作家の成長が始まったかと思うと感慨深い。

貴志先生の作品については別の機会に詳しく語るとして、キャラクターについてですが、これもなかなかよろしい。
どのキャラクターもちゃんと個性が出てて、うるさくなってない。
特にひなたと美鳥のキャラクターが良くて、ある衝撃の事実が分かった後のひなたの変化がイイ。

ただ、欠点を挙げるとするなら、あの続き物っぽい展開を予感させるオチはどうなのかと。
こういうショックを大事にする作品の場合、続き物にしちゃうと衝撃が減っていってしまうんですよね。
それと犯人の動機の部分で出てきた「門」の存在は無い方がよかったかな~。
ミステリーでこういう動機を持ち出されると、なんだか急にシラける。
予想のつかない動機とかで唸らせてくれれば、もっと評価上がったかも。

☆ イラストも萌えに媚びてなくてよろしい。

こういう変化球な作品の場合、イラストもちょっと尖がったタイプの人に描かせるとしっくり来ますね。
この作品のようなちょっとラフっぽさが残ったイラストって、結構好きです。

それにしても私も結構ラノベ読んできましたが、表紙イラストの出来がいいと基本的に内容もいいですね。
300冊近く読んできた私の経験ですが、イラストがイマイチだと思ったらほぼ8割がた内容もう~んな出来のような気がする。
ラノベは「文章とイラスト」というほかの文芸作品にはない要素の組み合わせで成り立ってますから、
表紙のイラストで作品を選ぶというのはラノベに関する限り、間違ってないのかもしれない。
もちろん例外もあるとは思いますが・・・。

総評

やっぱりガガガ文庫は優秀だな。
こういう作品に賞をあげるレーベルは、ちょっと応援したくなります。

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