目を擦る女

2010年04月03日 15:02

目を擦る女 (ハヤカワ文庫JA)目を擦る女 (ハヤカワ文庫JA)
(2003/09)
小林 泰三

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今回紹介するのは、以前紹介した「玩具修理者」の作者、小林泰三(こばやしやすみ)氏の作品集「目を擦る女」。
内容紹介

小林氏は短編の作品集が多く、「人獣細工」「家に棲むもの」「肉食屋敷」(もうタイトルから、中身が推測できますね)などの作品集を発表されています。
どの作品集も非常にクオリティが高く、日本の短編作家では「ミサイルマン」の平山夢明氏といい勝負でしょう。(2人とも異形コレクションの常連作家です)

収録作品

目を擦る女
「わたしが目を覚まさないように気をつけて」。
引っ越してきた部屋の隣室に住む土気色の肌の女は言った。指の付け根で目を擦りながら・・・
彼女は、この世界全てを夢見ているという・・・

超限探偵Σ
Σ、彼は合理的な解決が存在しないような事件に対してのみ、行動を開始する・・
物理的に実行不可能な密室殺人を解明する驚天動地の推理劇。

脳食い
人間の脳を襲う宇宙生命体の目的とは・・・心底怖いハッピーエンドが待つSFホラー

空からの風が止むとき
オトが生まれた日、最初の重力衰退が起こった・・・
収録作品中、唯一の正統派ハードSF。

刻印
自宅のトイレにて、蚊型の知的生命体と出くわしてしまった男の運命は・・・
驚愕のオチが待っている異色作。

未公開実験
とある男に呼び出された男二人。
その男は、「ターイムマスィーン」なるものを発明したといい・・・
小林氏の演劇的才能が光る作品。

予め決定されている明日
算盤(そろばん)人のケムロは、電子計算機が欲しくなり・・・
無数の算盤計算によって構築された仮想世界の落とし穴とは・・・


ハードSF的発想から生まれた作品群

日本ホラー小説大賞短編賞を受賞した「玩具修理者」に収録された「酔歩する男」がタイムスリップものの変種であると同時に、バリバリの量子ハードSFだったことで、小林氏はホラーファンだけでなく、SFファンからも注目されるようになりました。
そしてその後、あの国民的超人ウル○ラマンを、ハードSFの発想でグロテスクに描ききった「ΑΩ」で日本SF大賞の候補になるにまで至りました。
今回の作品でも、そのハードSF的センスは十分に生かされております。
特に「空からの風が止むとき」がもっとも小林氏のこうした特徴が生かされている様に思います。
しかも、変化球が多い収録作品の中で、賢い少女が知識と行動で世界を救うという、SFファンだけでなくライトノベルファンも喜びそうな設定なので、ホラーファンでなくとも注目の作品です。

もうひとつの特徴:汁気の多いグロテスク描写

小林氏の作品ほぼ全てに言えることですが、グロテスクな描写を書かせたら、日本屈指の作家ではないでしょうか。
処女作の「玩具修理者」でもそうでしたが、機械と生き物の境を平気で飛び越え、気持ち悪い気持ちよさみたいなものがあります。
これは「玩具修理者」作品中でも語られていますが、クトゥルー神話からの影響があるのではないかと思われます。

総評

相変わらず、小林氏の作品は私の予想を超えてきますね。
短編の出来は非常に高いものですし、バリエーションの豊かさも申し分ないでしょう。
なによりこの作品を読むと、小林氏の知識の確かさと底知れなさが味わえます。
自身を持っておすすめできる一冊です。

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