記憶の果て(講談社NOVELS)

2013年08月19日 22:17


記憶の果て (講談社ノベルス)記憶の果て (講談社ノベルス)
(1998/02)
浦賀 和宏

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メフィスト賞受賞作レビューもそこそこ続いてますが、
今回は第5回の受賞作。 ある意味「フリッカー式」とか「クビキリサイクル」へと繋がる先駆け的作品、だと自分では思ってますが…。

記憶の果て」(浦賀和宏著/講談社NOVELS
作品紹介

エンターテインメントの未来を照らす快作!
亡き父の書斎に入った安藤直樹は奇妙なコンピューターを発見する。電源を入れた途端、モニター上に自己紹介の文が流れ出した。このパソコンは「何者」なのか?

浦賀和宏と云う若い作家は、作法を創るべく模索している。その仕事は、新しい小説を求める者に、多くの示唆を与えてくれる筈である。紡がれたテキストは、ミステリだとかSFだとかいう既存の枠組みに与(くみ)することを嫌っているかのようである。それでいて、多くのジャンルに新たな可能性を悉(ことごと)く内包してもいる。均等な距離感に基づく世界観を以て築かれた物語は、読む者の偏差を明確に自覚させてくれるだろう。本書は、先行作品に対する敬意ある挑発である。――京極夏彦

☆ パソコンの向こうの「安藤裕子」とは何者? 第5回メフィスト賞受賞作!

コツコツ続けてきましたメフィスト賞受賞作レビュー。 今回は幻冬舎文庫「彼女は存在しない」がヒットした浦賀和宏氏のデビュー作「記憶の果て」です。
浦賀作品というと、今のところ上記の「彼女は存在しない」と講談社文庫の「眠りの牢獄」は読んだんですが、どちらもどんでん返しが秀逸なミステリ小説だったので(個人的には「眠りの牢獄」が好き)、“安藤直樹シリーズ”の1作目である本作もちょっと期待しておりました。
結論から言うと、ちょっと期待していたのとは違いましたが、面白かった。 浦賀氏がやりたいことがなんとなくわかった気がする。
コレ裏に京極夏彦氏が推薦文書いているんですが(上記参照)、確かにどのジャンルに当てはまらないボーダー的な作品ですよね。 SFと言うとなんか違うし、ミステリーと言っても謎解決しようって感じがあまりしないんですよね。 実際この作品におけるテンプレ的な“名探偵役”である金田を、主人公の安藤は推理の途中で殴って(!)退場させちゃうし…。 長々と安藤が本格ミステリに対する嫌悪感を露にするシーンもあって、著者のこのジャンルに対する複雑な思いを感じ取れました。
この作品において(一応ミステリ小説という観点で読むと)謎っていうと、冒頭の安藤の親父がどうして自殺したのかとか、安藤裕子とは誰なのかということ以外にもあるんですが、いくつか謎を残したまま話が終わってしまいます。
後半の浅倉さんの話も意図的に伏せているみたいだし、ここら辺は続巻で解明されるらしい?ので、早く続き読まなくては。

☆ 近親相姦、碇シンジ型主人公etc…。 浦賀作品を構成する要素。

しかし主人公の安藤直樹が、モロに碇シンジみたいな思考の持ち主なんですよね。後半なんて「逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ」ってずっと言ってそうな雰囲気でしたし。 金田の言う推理に耳を傾けようとしないで、自分にとって都合のいいことだけ選択して信じようとする安藤の行動にちょっとだけイラっとしますが、その名探偵に自分がなりきって推理を披露するシーンはなんという皮肉。

これは「眠りの牢獄」を読んだときに感じたことなんですが、「著者・佐藤友哉」って書いてあったら絶対信じちゃう自信がある(笑)。 そのぐらい雰囲気というか、作品を構成してる要素が似通ってるんですよね(特に「フリッカー式」と似ているように感じました)。 近親相姦、カニバリズム…いろいろタブーに踏み込んじゃってる感じがそっくり。 しかも「眠りの牢獄」には叙述トリックまで仕掛けられてて(これは上手い騙し方だと本気で思います)、トリッキーさが凄まじいです。 あれ?「眠りの牢獄」のレビューみたくなってきたぞ?(笑)

総評

実はこのシリーズ「萩原重化学工業殺人事件」が読みたいがために購入したようなものなんですよね。
なにぶん一冊が結構な分量なんで、続編「時の鳥籠」を早く読みたいと思います。前の謎を忘れないうちに…。

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