水没ピアノ 鏡創士のひきもどす犯罪(講談社文庫)

2013年03月03日 00:14


水没ピアノ 鏡創士がひきもどす犯罪 (講談社文庫)水没ピアノ 鏡創士がひきもどす犯罪 (講談社文庫)
(2008/04/15)
佐藤 友哉

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今年に入ってから続々レビューしている佐藤友哉氏の“鏡家サーガ”第3弾!
異なる3つの物語を貫くものは純愛!?
水没ピアノ 鏡創士がひきもどす犯罪」(佐藤友哉著/講談社文庫
作品紹介

工場で働く単調な日々に鬱々とするヒキコモリ気味の少年。少女を見えない悪意から護り続ける少年。密室状況の屋敷内で繰り広げられる惨殺劇。別々に進行する三つの物語を貫くものは、世界を反転させる衝撃の一文と、どこまでも深い“愛”である。なぜピアノは沈んだのか?著者渾身の戦慄純愛ミステリー。

☆ なぜピアノは沈んだのか? 異なる3つの物語が重なるその先には。

佐藤友哉氏の鏡家サーガ第3弾。
前作「エナメルを塗った魂の比重」は学校を舞台に、クラスで起きた密室殺人を三つの視点から描いていましたが、今回も3つの視点から話が語られるのは変わらず。 ただし前回と違うのは、3つの話が一見無関係に見えること。

1.工場勤めの引きこもり気味の少年は、“顔を知らない女性”紘子とのやり取りを続けていたが…。
2.密室状況の星野家屋敷内で、梢によって引き起こされる惨劇。 彼らは屋敷から脱出できるのか!?
3・見えない悪意から伽耶子を守ろうと行動する“僕”。 そんな中、彼の周りで事件が発生し…。

この異なる3つの話が終盤まで交わることなく進み、ラスト付近で驚愕の交差を果たします。
これ読んで真っ先に思い浮かべたのは、以前このブログで大絶賛した角川ホラー文庫「熱帯夜」の著者・曽根圭介氏の傑作ミステリー「藁にもすがる獣たち」(講談社単行本)。 こちらも異なる3つの物語が終盤で驚きの展開をするわけですが、はっきり言ってほとんど「水没ピアノ」の犯罪小説版みたいな感じ。 刊行されたのは「水没ピアノ」の方が明らかに先なので、曽根氏はどこかで「水没ピアノ」を読んでいたのかもしれません。
それはともかく、こういう話は“どういう風に3つの話を繋げるか”に著者のセンスが出てくるわけですが、そういう意味ではあいも変わらず佐藤友哉作品でした。 登場人物たちの行動の動機がイタ過ぎるのは変わらず。(特に3の少年の動機が特に)

☆ 文学への歩み寄りも。

この作品と平行して、佐藤友哉氏の三島由紀夫賞受賞作である「1000の小説とバックベア-ド」(新潮文庫)を読んだんですが、この「水没ピアノ」を読むと、どうして佐藤氏が「バックベアード」を書くに至るのかがなんとなくわかります。 前回までは割りとアニメとかサブカル方面のネタが散りばめられていましたけど、今回はそれが減って、代わりに文学からの引用がちょっとずつ増えてきているんですよね。
この傾向はどうやら次回作「クリスマステロル」でも続くみたいですが、個人的なことを言ってしまうと、もっと「フリッカー式」「エナメル~」の方向性で続けてほしかったな~ってのはあります。
「1000の小説~」は正直な所、文学文学していて、それはそれでいいんですが、「フリッカー式」のドライヴ感がちょっと懐かしくなってしまいますね…。

ともあれ、本作「水没ピアノ」も『S』ランクの出来栄え!
刺激が欲しい人にはうってつけの内容です!


総評

面白いな~このシリーズ。
しかし今の所文庫化されている“鏡家サーガ”は次の「クリスマス・テロル」まで。
あとがきに例のブチ切れ後記があるといういわくつきの作品です。 いろんな意味で楽しみではあります。

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